2008-06-03

思考のメモ 今と10年後の自分


Ludwig Wittgensteinという哲学者は「アスペクト転換」ということを言いました 


ウサギ・アヒルのどちらにも見える図を引き合いに出して 人がものを見るときにアスペクトというものが伴ってる ってことを言ったのですが 簡単に言うと人はあるアスペクト=相のもとに世界を生きており 何らかの理由でその相 に変化がもたらされると 世界はその人にとって全く異なるのものとして立ち現れてくるということです(とても悲しいことがあった帰り道 いつもの道が素敵な風景じゃな く 恐ろしく暗い 不安な道になっている...とか まったく見え方がかわってしまう みたいな)

村上春樹がすきではない と書いたけど 梅田望夫の文章に触れて もう一回見直したら 景色が変わったような気がしました 村上の文章の「感じ」や 言葉の数々が 自分のモヤーっとした考えをうまく言い当ててくれたり ヒントを与えてくれている と感じることが多くありました また梅田の「生きるために水を飲むような読書」という提案にも共感しました。

LW の著作Philosophical Investigations の第二部 100ページくらいの短い文章を4年間にわたり読んできました もうすぐ全部終わる予定です 哲学書を原書で最後までちゃんと読みきるのは人生で初めてのことです LWを読むという こと それはとりもなおさず「考えること」であったと強く実感します


ひとりで読んでるとき 先生や演習の皆と検討しているとき... いつも1「LWは 何をいっているのか」2「だから何なんだ?」ということを考えてきました しかし途中からは研究者になることを目標にしたため 3「それが研究者としての キャリアアップの素材としてどう使えるか」的な視点が入ってきてたと思います それはどこかで強いられたものであり 内側からわき上がってくる衝動ではなかった気がします 

僕は就職することを選び 3は全く不要になりました その結果 純粋に1と2だけを考えています とても楽しいです 今の自分には LWを読む体験を通し 本当に「哲学」をすることができたという実感があり 前あった学問的モヤモヤ(自分は何をしたい・考えたいんだ…?的な)はいつのまにか消えて スッキリとしています


大学をやめて カリグラフィーのクラスを聴講してたことについて steve jobsはこんなことを言っています 

...None of this had even a hope of any practical application in my life. But ten years later, when we were designing the first Macintosh computer, it all came back to me. And we designed it all into the Mac. It was the first computer with beautiful typography. If I had never dropped in on that single course in college, the Mac would have never had multiple typefaces or proportionally spaced fonts. And since Windows just copied the Mac, its likely that no personal computer would have them. If I had never dropped out, I would have never dropped in on this calligraphy class, and personal computers might not have the wonderful typography that they do. Of course it was impossible to connect the dots looking forward when I was in college. But it was very, very clear looking backwards ten years later.

Again, you can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.
http://news-service.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html

実は今の時点で2がなんなのかあまり分かっていません 
「考えることに終わりはない」ということ以外は 

4年もやってそれかよ と思うかもしれませんが でもjobsが言うみたいに とにかくやってきました 2が全然わからないのにもかかわらず もっと読みたいと常に思う とても面白い本です 「好きだから時間を費やして打ち込み 継続できる」ていうのがほんとに実感できました それも今度 一応の区切りを迎えます ちょうど後ろを振り返るのに良いと思います

就職したらやりたいことは何か 「海外営業」「海外法人マネジメント」「海外マーケティング」「海外駐在」などです 理由は昔から 外国語を使って人とコミュニケーションするのが好きで 知らない外国の土地に行ってみるのが好きで...というシンプルなものです 結果としてそういう機会が回ってきそうな会社を選択しました 

その会社は海外の売り上げを急激に伸ばし(7割) 規模も中堅から大企業へ 大変化の途中です つまり海外への設備投資はまだまだ完了しておらず 人材も不足気味 新組織作りも混沌とした部分を残しています グローバル企業への急激な変化途中 ここにやりたいことの期待を重ねあわせ 選びました 

一方 英語力だけで見れば その職種には全く不十分だと思います 帰国子女や長期留学経験者で同じ考えの人は沢山いるはずです こうした自分の予想と全く同 じことをかなり前に バイト先の居酒屋のマスターと 先輩/友人の農家でブレーン的な役割をしているオジ(イ)サン に指摘されました

バイト中 厨房では二人きりなので 酒の銘柄 接客 裏社会 マルチ商法の話など いろいろ勉強になるのですが 自分が抱いてたのと全く同じ指摘をいきなりされ  驚きました 同時に「じゃあどうする?」を リアリティを持って考え始めました 幸い僕には フランス語・アラビア語の経験があります 『ウェブ時代をゆく』で梅田望夫・羽生善治の言う「高速道路」の先にある「高く険しい道」が「英語を極め 海外へ」だとしたら フランス・アラビア語は「けものみち」でしょう つまり 既習者 が少ない言語への精通と 英語と 自分の意見を持ち主張していくことで ゴチャゴチャっと何とかならないか さらに簿記などの数字の基礎 ミニ株等の実践を通した金融の知識を加えれば もっといいんじゃないか 今からやろう… と考えを移していきました


農家のオジサンはもう歳いってますが 高校卒業と同時に 「日本人のほとんど誰も今やってない言語で 話者が一番多いものを今やれば 絶対チャンスがまわってくる」という考えのもと イタリア その後スペインに渡り 2言語をマスターし 通訳 翻訳業 記者 SE 不動産投資などなどなど 様々な手段で金を稼いできた まさにthe man of visionともいうべき大先輩です

その方の知り合いで オタクのスペイン人がいました 僕と同世代で 日本オタク 激しいアニメオタクで 少年ジャンプに載ってる漫画の主題歌などは全部歌えます とにかく日本にきて何かしたいと つてをたどってその農家に居候していました

オジサンは ヨーロッパ中のオタク人脈をもつそのスペイン人に 「日本アニメの異常な知識と EUオタク同士の強固なネットワークを利用し 日本で購入したグッズを EUで売りさばく方法を確立せよ」という趣旨のアドバイスを行いました 彼が東京に出て数ヶ月後 ブックオフやまんだらけ等で格安で投げ売りされている 日本人なら目も向けないような漫画 アニメ フィギア等を買いさらい 海外に提供するためのポータルサイトを立ち上げたという知らせが スペインから届きました 彼はスペインの新聞に取材されていたのです 今では 日に数万円稼ぐビジネスをしながら 東京でしあわせにアニメを掘っていることでしょう
 

(ちなみに現在 そのオジサンが最も面白いと考えているのが 農業を中心に 地震保険・人材サービス等を組み合わせた全く新しい事業であり そこに飛び込んだのが 僕の先輩と同級生なのですhttp://hagetaka-plus.com/about/index_2.html

そのオジサンからインスピレーションを受けた僕の頭には  ルーマニア語 チェコ語 ポーランド語 が浮かびました 既習者が少なく EUに加盟していて  貧しく 人件費が安い…からです フランス語と同じロマンス系という理由で 僕にはルーマニア語がとりわけ浮き立って見えます (既に日系企業の設備投資は進んでいるらしいですが) これを僕のサバイバルの道具に加えたらどうか けっこういいんじゃないか と今考えています

そのために 時間の使い方を変えてみようと決めました 具体的には今まで学問につぎこんできた時間を 上の事々に充てます 内から出てくる「やりたい」に動かされているので 継続できる気がします その結果 修士号をとらないかもしれません それでも入社はできますが 当然 給料やボーナスは減ります それでもやるのか… やりたいと思います 今こうした選択を行った自分の市場価値が 例えば10年後 この選択をしなかった自分の市場価値を上回っており  「ああ やっぱ色々おもしろいことになったから良かった」 と言えている そういう状況に自分がいることを信じよう と思います  

自分の市場価値 ということに関しては もう一つ思います その価値創出のため 仮に例えば10年で その会社から吸収できる事をとにかく全て吸収し なるべく早い時期に この会社をやめてもいいと思えるような段階にまで達する そのぐらいのポジティブな緊張感をもって臨もうと思います

30代から能力給になる 入社2-5年ぐらいのやつを海外に派遣する制度がある 40代になってやることになる仕事の性質 を考慮すると 10年でチャンスが回ってくれば嬉しい こなければその先も来ない と予測できます

それなりの市場価値を自分がもっていれば 「海外もいったし 別の会社でやりたいことやろう/ここでもっと掘ろう」「いけなかったけど こっちの会社がいい  これがやりたい/まだ残っとこう」という判断を自分の裁量ででき それを他人もある程度評価してくれると思うからです

ここまで考えてきた事が 仮に全部かなわなかった もしくは考えが全く変わってしまった としても 余裕です 月数十万+いろんな保障が残ってます 余裕ッス! と思う一方 それで満足していない自分がいます



改めて 考えることに終わりはないと強く実感します  加えて LWはいつも真剣でした それが奇妙な感動を与えるものだったから 読む事に駆り立てられて たと思います 今後 自分の中に "自分LW" 的なものを持って ポジティブに考えて続けていく事が 可能だと思います

(後輩 kakのblogにインスパイアされました)

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